正しい傷の手当て 本文へジャンプ





傷を治す意味


▪ 皮膚の機能障害をもどす
▪ 目立つ傷あとになるのを避ける
▪ 快適な日常生活

器械への接触と摩擦熱による外傷


 傷は,家庭や学校,職場やレジャー先など,日常いろいろなところで発生します。傷の程度も,ちょっとしたすり傷から皮膚が深く裂けた傷までさまざまです。転んでできた傷もあれば,病気のためにいつの間にかできた傷,手術でできた傷もあります。程度や原因は違っても,体を覆っている皮膚が傷んだ状態はすべて傷です。つまり,やけども傷ですし,褥瘡(床ずれ)も体にできた傷の一種なのです。
 日ごろ何げなく見ている皮膚も,人体のかなりの割合を占めている臓器であり,たくさんの重要な機能を持っています。体全体の被覆と保護,体温の調整,皮脂や汗などの分泌,栄養物の貯蔵や合成,触覚や痛覚など感覚の受容器としての機能などです。また,感情を表現する働きもあります。傷が生じると,当然このような機能は消失します。傷が治るのに時間がかかればかかるほど,この機能障害の影響が強くなります。一番の問題は,被覆と保護機能の消失でしょう。局所の感染を起こし,感染の範囲が少しずつ広がって蜂窩織炎(比較的広い範囲に発赤や脹れ,疼痛,熱感を起こし,全身の発熱を伴う皮膚から皮下組織の感染症),敗血症(細菌自体あるいは細菌毒素が全身に回り,高熱や意識障害など重篤な全身状態となる重症感染症)を起こし体の調子を悪くしてしまうことがあります。また,自分の体に傷がいつまでもあるのはいやなものです。
 治りにくい傷は,いわゆるケロイドの発生原因にもなります。目立つ傷あととして,残りやすいのです。今の医学ではけがでできた傷あとも手術でできた傷あとも,完全に消してしまうことは無理です。医学の世界に魔法はありません。しかし,正しい治療方法で傷を早く治すことができれば,傷あとも残りにくくなります。目立ちにくい傷あとは,性や年齢に無関係にみなさんが望むことではないでしょうか。また,早く傷が治れば,快適な日常生活に早く戻れますし,治療にかかる費用や時間を節約することもできます。



血管の病気でできた下腿の傷
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手関節の近くを動物に咬まれ,感染が肩関節のあたりまで拡大。
右上肢全体の強い発赤,熱感,腫脹,疼痛,そして全身的発熱を認めた。

いわゆるケロイド(赤く硬く隆起した醜状瘢痕)

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